君に恋した冬
第16章 衝突
恭介とは公園で別れて、1人で家路についた
軽く着替えを済ませてアキラからの連絡を待っていると、7時過ぎに連絡がきて、いつもの場所で落ち合った
緊張からか由梨は一言も言葉を発せずに、普段静かな2人だけれど今日は一層静かだった。
アキラも相変わらず由梨の様子の変化に気付いていても何も訊かずに黙っていた
そのままアキラの家に着き、しばらく沈黙が続いていた頃、アキラの携帯に一本の電話が入る
「もしもし……あぁ、今日?…んー」
静かな部屋に、受話器から微かに相手の声が洩れる
それを聴いて由梨は目の前がぐらついてしまう
女の人の声…
あの日の、sakiの店長とは全然違う
甘ったるい女の声と、後ろの喧騒すらもハッキリ聴こえてしまった
バクバクと嫌な焦りで心臓が鳴る
手にはうっすらと汗が滲む
アキラ…その人は…誰?
アキラを直視出来ずに、顔を俯ける
「今日はちょっと無理……え?まじ?…
んー…じゃあまた後で顔出すから。わかった。」
後で顔を出す…って事は、その人に
会いに行くのね…
目の前が真っ暗になったような気分で、目頭が熱くなってくる
膝の上でギュッと手を握り、涙が落ちないように必死で耐えた
「由梨、悪いちょっと用事出来た」
アキラがこちらに向き直って話し出す
嫌……嫌だよ…行かないで……
『………だ……』