君に恋した冬
第17章 真実への階段
それから由梨はポツリポツリとアキラとの出会いから順を追って話し出した
『アキラと出会ったのはね、去年の今日だったの。
その頃の私は、この前の大智くん覚えてる?
その人の事がずっと好きで…でもフられちゃって…
そんなとき、街でフラフラ歩いてたら
すごく柄の悪い人たちにぶつかってしまったの。
そのうちの1人がアキラだった…』
大切な思い出を懐かしんで、大事に大事に由梨は話す
『出会いは最低だったんだけど、アキラだけは優しくて
それから毎日一緒に過ごすようになったの。
ずっと眼鏡でボサボサでダサかった私を変えてくれたのもアキラだった。
大智くんに告白された時、素直に喜べなくて
その時はよくわからなかったんだけど
今思うとね、もうその時から私はアキラが好きだったんだと思う…』
そこまで話して、止まっていた涙がまた堰を切った様に溢れ出す
『その時にね…離さないって、言ってくれたんだよ…
どうしてかまでは教えてくれなかったけど…
でも、私は凄く嬉しくて…
1人で舞い上がっちゃった…』
自嘲気味にははっと渇いた笑みをこぼす由梨は
なんとも痛ましくて、恭介は思わず由梨をキツく抱き締めた
「もう…いいから、黙ってろ…」
恭介の腕の中にすっぽりと納まって、身体と心が少しだけ温まった気がした
「俺にしとけよ」
頭の上から落ちてくる言葉に、ぐらついてしまいそうだった
この手にすがりつくのは凄く簡単で
寂しさを埋めるためにはすがりつけばいいだけの事で
でも、由梨には出来なかった
『そんなの…無理だよ…』