君に恋した冬
第17章 真実への階段
ガチャッとドアが開かれて
そこにはずっと会いたくて仕方なかった人が立っていて
思わず顔が綻んでしまう
「早…もう来たの?」
少し眠そうな雰囲気で
心なしか衣服が乱れている
『あ…』
上がった息と、トクントクンと音を立てる心臓
それが喉につかえて上手く喋れない
「今、人来てるから」
だからここで用を済ませてくれ。
言葉には出さなくても充分過ぎるほどに伝わって
ひどく悲しい気持ちになる
『あ…ごめんなさい。長い間持ったままで…』
由梨はそれを悟られないように、少し俯いて
キーケースからアキラの部屋の鍵を取り外し始める
アキラはどこか遠くへ視線を向けて
由梨の方は見れなかった
手が震えてなかなかすぐに取り外せなくて
あたふたしていると、部屋の中から
聞きたくなかった声が聞こえてくる
「アキラ~まだあ~?」
甘ったるい女の声…
「ごめん、急いでくれる?」
アキラの素っ気ない一言
由梨は目の前が真っ暗になった
『あの…ごめんなさい』
何故だか居合わせてはいけない場面に
来てしまった気がして、思わず謝ってから
やっと取れた鍵をアキラの胸にドンっと強く押しつける
そのまま下を向いたまま、静かに告げた
『さよなら…』
それからはもう、振り返らずに
逃げるように走ってその場を去った
いや、逃げたかった
見たくなかった
聞きたくなかった
アキラが他の女の人と居る所なんて