君に恋した冬
第17章 真実への階段
待ち合わせ場所に着くと
バイトのメンバーが既に全員揃っていた
今日の合コンは5対5らしくて
こちらは全員バイト仲間
あちらは着いてからのお楽しみだそうだ。
「由梨!ちょっとその頭!」
『え?』
服装は可愛らしく仕上がっているのに
髪の毛はだらしなくボサボサのままだった
何もやる気が起きなくて、メイクもしてこなかった
歩美は半ば強引に由梨を近くの公園のベンチに座らせ
自らのメイク道具で軽くメイクをし
髪の毛をハーフアップにしてピンで留めた部分を隠すためにシュシュを巻きつけた
「ダメじゃない。もっと気合い入れないと!」
『ごめんなさい。よくわからなくて』
適当に受け答えをしてしまう。
そのまま相手との待ち合わせ場所まで歩いた
駅前のお洒落な居酒屋でもう相手は待っているとのことだった
「あ!歩美!こっちこっち!」
「あ、たっくんお待たせー!」
奥の席からこちらを招く声が聞こえるが
由梨はそちらには視線を向けずにずっと下を向いていた
皆はどこかうきうきとしていて
自分一人だけが浮いていたが、気にかけられなかった
うるさい…
店内の喧騒が寝不足の頭に響いた
そのまま前を向くこともなく、促された端の席に座る
間もなく自己紹介が始まりだした