君に恋した冬
第17章 真実への階段
「で、端の子が由梨ちゃんです!」
とうとう自分の番がまわってきて
皆は一言挨拶をしていたが、動揺のあまり何も言えずに俯いたままになってしまった
「ごめんね。彼女少し引っ込み思案なの。
優しく接してあげてね。」
歩美がすかさずフォローを入れてくれて助かった
それからテーブルにドリンクが運ばれてくる
皆はお酒だったけど、由梨は烏龍茶にして貰った
「では、かんぱーい!」
拓海の音頭で合コンは始まった。
皆は好きずきに、趣味の話などで会話に花を咲かせていた
当然由梨は会話に入ることもなく、視線をさまよわせて
どうやってここから逃げようか
そればかり考えていた
アキラの通う大学は、就職率が高い事で有名らしくて
割と頭が良くないと入れないそうだった。
今日は就活終わりらしく、相手は皆スーツ姿だった。
無情にも、やはりアキラは群を抜いて格好良かった
初めて見るスーツ姿は新鮮で
前までの関係だったら間違いなく
格好良いと口に出していたと思う。
「アキラくんは彼女とかいるんですか?」
バイト仲間の沙也香が投げかけた質問に
由梨はピクッと身体を震わせる
「いないよ」
その一言にこの間の女の人は?という疑問が浮かんだが
とりあえずほっとするのも束の間
「えー!本当!?じゃあ私なんかどうですか?」
「いいね。沙也香ちゃん可愛いし」
「やだー!嬉しいー!本気にしちゃいますよー?」
やだ…聞きたくない…
ギュッと歯を食いしばって、何かが身体を突き上がってくる感覚を必死に堪える
それからもアキラは、まるで由梨に見せつけるかの様に沙也香とベタベタし始め
由梨の事など一切気にした様子もなく、他人のフリをしていた
気持ち悪い…
そんな2人を見ていて、本当に気分が悪くなっていた