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君に恋した冬

第17章 真実への階段



心配するその声は少し高めの中性的な声
これも低いアキラとは正反対


全部をアキラと比べてしまう自分が嫌だった



『あ…本当に、大丈夫ですから…』


あっちへ行ってとは言えなかった


さっきからアキラと沙也香は仲良さそうに2人だけの世界に入っているようだった


由梨の気分もどんどん悪くなっていたのは事実だった


「最初見たときから気になっててさ。少し話したいと思ってたんだよ」


ニコッと微笑まれた瞬間に
今まで我慢していた衝動が身体を突き抜ける感覚に襲われる


『…っ!』


返事もそこそこに、誰にも告げずにトイレへと駆け込み
そのまま便器に顔を突っ伏して戻してしまった



『はっ…かはっ…ゲホッ…』


胃酸で喉が焼けたように痛い


アキラが他の人とベタベタしているのを見ているだけで吐いてしまう自分は
いよいよ重症だなと思う



個室を出て、口元をゆすいでいると
腕に光るブレスレットに気付く


アキラにつけてもらってから一度も外さなかった大切な物


じっとその腕を見つめる



──さよなら



自分で告げたさよなら



そっとそれを外して蛇口の横に置いた




大切だったブレスレットは
今はもうアキラに縛り付けられる手錠のようで

もう辛くて苦しいアキラへの想いから逃げたくて

これを贈ってくれた優しさを嘘だと思いたくて

そう思うことで全てが諦めきれると思って



大切なそれを、手離してしまった



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