君に恋した冬
第18章 想いにさよなら
次の日、先生に言われたとおり産婦人科を受診した
尿検査のあとに内診をして、お腹の中の写真を貰った
まだ全然小さくて、人のカタチとは言えなかったけど、でも確かにお腹に赤ちゃんがいる。
それだけで由梨は涙が出そうな程に嬉しかった。
「今は3ヶ月ですけど…どうしますか?」
眼鏡をかけた40代くらいの柔らかい雰囲気の女医さんが、やや心配そうに尋ねてきた
産むか、おろすか。それを訊いている事はすぐにわかった。
由梨はしっかりとした口調で
『産みます』
そう答えた。
「周囲に頼れる方とかはいますか?」
先生は両親のいない由梨を心配してくれている。
誰に何を言われてもやりきってみせると
強く思っていた由梨は
『はい。います。』
そう嘘をついた。
誰にも言わずに、誰にも内緒で
この子とひっそりと生きていく
由梨の意思は固かった
「わかりました。では産む方向で進めていきましょうね」
先生は優しく微笑むと
妊娠中の心得を書いてある冊子と
産婦人科の診察券をくれた
次回の検査を2週間後の午前に予約して
そのまま産婦人科をあとにして内科病棟の自室へ戻った