君に恋した冬
第18章 想いにさよなら
それから由梨は退院してまず最初に
高校に退学届けを提出した。
卒業出来ない事を考えても、全然苦しくなかった。
妊婦向け雑誌や、育児雑誌などを買い漁って必死に勉強した。
相変わらず悪阻が酷くて、頑張って食事を摂ろうとしても気持ち悪くて何度も戻してしまっていた。
それでも、それが赤ちゃんが生きている証拠だと思うと嬉しくて、辛い悪阻にも耐えられた。
由梨は両親の残してくれた、この大きい5LDKの一軒家に、初めて感謝した。
子供と住める環境があるというのはとても大事なことだと、雑誌を通してわかった。
そして、5日ぶりのバイトの日を迎える。
バイトを辞める
それが今日の由梨のやるべき事だった。
『おはようございます』
「あ、おはよー!由梨!」
休憩室には歩美と恭介が居た。
「おす」
恭介も軽く挨拶をしてくる。
その姿を見てギュッと胸が締め付けられるようだった。
もう、この2人とは会えなくなる
特に恭介には絶対にバレてはいけない
でも…いざ会えないってなると…
やっぱり寂しい…
この2人のことも、大好きだから…
いつの間にか俯いてしまっていた由梨に
恭介は心配そうに声をかけた。
「おい、どうした?大丈夫か?」
ズキン…
心が痛かった
いつまでも優しい恭介を
最後の最後まで傷つけてしまう自分が
本当に許せなかった
だけどそれ以上に、こんな自分をいつまでも想ってくれている恭介に
今から自分がとろうとしている行動を思うと申し訳ない気持ちでいっぱいだった
『私ね…バイト、辞めようと思っているの』