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君に恋した冬

第18章 想いにさよなら



そのままそっと手を離して


『幸せになってね』


一言告げ、踵を返して振り返らずに歩いた。
最後は笑顔で離れたかった。

アキラとは、そう出来なかったから


恭介の顔は、見ないようにした。

見てしまったら、また心が揺れてしまいそうだったから。
また恭介の優しさに甘えてしまいそうだったから。


もう、私の事は忘れて…



少し歩いてから


「俺はいつでもあんたの味方だから!
辛いときはすぐに俺を呼べよ!
すぐに行ってやるから!!

由梨はひとりじゃねぇから!!」



恭介が叫んでいた。




とめどなく涙が溢れて、ぐちゃぐちゃで前が見えない



恭介はたぶん、由梨の様子から
もう会わないという由梨の意思を悟っていた


最後まで一歩後ろから由梨の背中を押してくれた





ありがとう…

ありがとう…


絶対に、幸せになって…



子供のようにわんわんと声を出して泣いた


涙が枯れるまで泣いた



それでもやっぱり


アキラの事しか考えられなくて…



いつも手を差しのべてくれて
すごく優しい彼の手を振りほどいて


もう会えない不器用な人の手を取りたくて



お腹の中の命を守りたくて



私にはこんなやり方しか

思いつかなかった…




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