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君に恋した冬

第18章 想いにさよなら




それからは買い物以外はずっと家から出なかった。


だんだんと出てくるお腹に、なんとも言えない喜びが湧き上がってくるが
人の目につかないようにひっそりと暮らした。


アキラに会いたい


そう思わなかった日は1日たりとも無かった。


たった一人での妊娠と、いずれ迎える出産の不安は
予想以上に大きいものだった。



アキラとの赤ちゃんだから…



それだけを心の糧にして、精一杯不安を取り除く事に集中した。




月日はあっという間に流れ


由梨は妊娠8ヶ月に入っていた。




ぽっこりと出たお腹は、誰がどう見ても妊婦そのもので、
買い物に出るときは必ずワンピースなどでカモフラージュしていた。


季節はいつしか夏真っ最中で


大きなお腹を支えて歩くのには少し辛い時期だった。



最近なんだかお腹がチクチクする…



大きくなった自分のお腹をさすりながら
由梨は言いしれぬ不安に駆られていた



次の健診はまだ3週間も先だし…


この痛みは何だろう…


もし赤ちゃんに何かあったらどうしよう…



右も左もわからない状態では
何をしていいかもわからなくて


ただその痛みをやり過ごすことしか出来なかった




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