君に恋した冬
第19章 過去
絶え間なく続く激痛に、頭をかきむしるように暴れて由梨は地面へと倒れ込んだ
「母さん!これ以上はもう無理だ。外へ連れて行く。
あとは俺がなんとかするから」
恭介に引きずられる様に、由梨はおばさんの病室を後にした
「落ち着いたか…?」
『うん…ごめんね…』
差し出された麦茶を一口飲んで、由梨は共有スペースの窓際の席に腰掛けていた
「悪かった…急に、あんな話…」
『ううん…それより、何を言われていたのか…
アキラを許すって…償いって…一体何なの?』
由梨の言葉に、恭介は少し考えてから意を決した様に携帯を取り出した
「あんた…今日このあと時間ある?」
『今日は…大丈夫だけど…』
未来の所へ行こうと思っていたが、それよりもまず、おばさんの話の真意を突き止めたかった
「じゃあちょっと俺に付き合って」
そう言って立ち上がり、恭介は少し離れた場所で電話をかけ始めた
未来…ちょっと待っててね…
あなたのお父さんの事を…しっかり確かめてくるから…
無意識に緊張していた由梨は
思わずゴクリと唾を飲んだ
やがて恭介が戻ってきて
「行こう」
それだけ言ってスタスタと行ってしまう
由梨は慌ててその後を追った