君に恋した冬
第19章 過去
恭介はどんどん店内を突き進んで行く
階段に差し掛かり、あの現場が近付いてくる
恭介がどういうつもりなのかは解らない
でも、由梨は恭介を信じていた
だから必死に恐怖を拭い、後を追った
2階のある部屋の前で立ち止まり
恭介はふぅっと息を吐いて深呼吸して由梨を見つめた
あの鉄扉の向こうは…
考えてゾッとする。
由梨も緊張した顔で恭介を見つめ返した
「もう後には退けない。それでもいい覚悟はあるか?」
『え…どういう意味…?』
「真実を知る覚悟…ある?」
真実を…知る……
私は、知りたい。
どうしておばさんが泣いていたのか
どうしてあの写真を見ると頭が痛いのか
どうしてアキラを許してほしいと言ったのか
どうしてアキラは私を振ったのか…
由梨はしっかりと恭介の目を見て
『出来ているわ。』
私には、未来がいるもの。
その答えに恭介も何かを吹っ切った様に少し笑って
「じゃあ、行くぞ」
その声と共に勢いよく頑丈な鉄扉を開けた