さよならから始まる恋物語【Love story】~雪の女王~
第6章 SideⅥ(沙絢)~恋人たちの聖夜~
家を出ていった母に初めて出逢った高校生の時、母をかすみ草のような物静かで可憐な女の子だと思ったそうだ。だが、母はかすみ草どころか、夫や我が子を平気で棄てるような冷淡な女だった。
それでも、父が母のことを悪く言ったことは一度たりともない。口には出さなかったけれど、父は最後まで母を愛していたのだと思う。時にはかすみ草を買ってきて、部屋の片隅の花瓶に活けて、ひっそりと眺めているときがあった。
それでも、父が母のことを悪く言ったことは一度たりともない。口には出さなかったけれど、父は最後まで母を愛していたのだと思う。時にはかすみ草を買ってきて、部屋の片隅の花瓶に活けて、ひっそりと眺めているときがあった。