貴方の気持ちが、分からない。
第1章 始まりは、ここから。
こういうときに限って、5限が音楽だったりする。
音楽は美樹先生だ。
みんなは、美樹先生のことが好きだけど、
私は、どうしても好きになれない。
あの香水の匂いが、
出てったお父さんの愛人と似てるから。
お母さんに会いに来た、男の花束の匂いに似てるから。
とにかく、今後、好きになれそうもない。
ボーッとしながら授業も終わり、
出ていこうとしたら、
「萩野さん。」
と呼ばれた。
「…はい、なんですか?」
「あんまり、松本先生を困らせちゃダメよ?悩みなら、先生も聞くわ?」
…お互い、表面だけの笑顔。
「はい、ありがとうございます。」
長い髪を揺らしながら、ふふっ、と微笑むと、
教室を、出ていった。