貴方の気持ちが、分からない。
第1章 始まりは、ここから。
放課後、部活に入ってない私は、
ギリギリまで、保健室にいる。
夜にならないと、親が来ないから。
と言う理由は、全くの嘘で、
本当は、松本センセイとギリギリまで居たいから。
「失礼します。」
ドアを開けると、
私の嫌いな匂いがした。
「日和、また来たの?」
「ここに来るのは、毎日のことですよ?」
そう言って、センセイの近くの椅子に座る。
「あ、ちょうど良かった。消毒液の補充してくれない?そこに詰め替えあるから。」
…
いつもは、嫌いな消毒液の匂いも、
今日は、あの匂いを消してくれるから嬉しい。
「美樹先生、来ました?」
「うん、来たよ。どして?」
「先生の匂い、したんで。」
「用事、あったんだって。」
「昼休み、ずっとですか?」
…
……聞いてしまった。
デスクで書類をまとめてたセンセイは、手を止めて、私の方に歩み寄ってきた。
背中から、包まれる。
「…子供には、関係ないコト。でしょ?」
そう、これは、何回も言われてきた。
初めて松本センセイと美樹先生の関係を知ったとき、
私の思いを伝えたとき、
全てこの一言で、言いくるめられる。
ホント、大人っていいね。