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Sincerely

第10章 世界で一番、遠い場所 前編

そしてやってきた、旅行の日。
前の日に眠れなくて、少し腫れた目で駅前に立つ。

「ユミコ、おはよう」
「おは…よう、ございましゅ」
あいさつ、かんじゃった。
でもマサヨシは頭をクシャッと軽くかき回すといつもの笑顔で、
「じゃあ行こうか?電車で行くよ」
わたしの手を取って、改札へ向かった。


電車…か。
普段、乗る事ってほとんどないな。
おかげで、窓の外の風景がすごく新鮮で。
そして、何より。
気持ちいつもよりはしゃいでるわたしを穏やかに見ているマサヨシに。

ドキドキする───


電車に乗る前に買ったお茶を一口飲んで、わたしは改めてマサヨシの方を見る。

いつもより少ーし、オシャレ…かな?

まぁわたしもさり気なく気合入れて洋服を選んだから、おあいこだよね。


流れて行く風景。
いつの間にかマサヨシに肩を抱き寄せられて。
エッチもした間柄なのに、予想以上にドキドキして、呼吸まで苦しくなりそう───

そんな状態のまま、電車は目的の駅までわたし達を運んでいった。

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