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BL短編

第5章 罠に掛かるは甲か乙か

ピリッと首筋に痛みを感じる。

「付き合ってた頃から、ずっとこうしたかった。」

赤い鬱血痕ができているだろう皮膚に、山下が愛しげに触れる。


「もう俺も大人なんだ。したいこと全部したらいいさ。」
素直とは程遠いけど、今の俺にはこれが精一杯。

言った途端、また山下にキスされる。

「キスばっかするのは、昔から変わらないのな。」
鎖骨や胸板に繰り返し痛みのあるキスを何度もされる。付き合ってた頃は唇同士のキスしか知らなかったけど。

「キスされるのは嫌?」
言いながら更にチュウっと音を立てて吸われること数回。

「...嫌じゃない。」

膨らんでいない乳を吸われ、乳輪を吸われ、たっぷり焦らされてから乳首を吸われる。
待ち望んた快感に、乳首がぷっくりと膨らんで気持ちが良いと体が主張する。

みぞおちや、割れた腹筋の膨らみや窪み、どれだけ吸うんだと言うほど吸われ続ける。
きっと俺の胴体は蜂の大群に刺されたように、赤い痕が広がっているはずだ。

「仕事中にあれこれ聞かれたくないから、目立つ所は止めてくれよ?」

今浮かぶ懸念はそれだけだった。

「そう言われるとしたくなる。」
手の甲に、耳のすぐ下に、うなじに、喉仏の周囲に、赤い痕が増える。


「あー...まあ、いいか。俺に言い訳しろってことね。」
困るのは間違いないけれど、嬉しさがそれを勝っているから、なんとかできるはずだと。


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