BL短編
第5章 罠に掛かるは甲か乙か
「する。」
決意をこめたような鋭い目で言われたあと、山下が唇に人差し指を付けた。
「何?」
「え...?」
「言いたいことあるなら言えば?考えるだけ考えてなんでもないとか言われたくはないよ。」
毒づくような言い方は、しばらく直りそうにない。もうずっとこうだったから。
「いや、康介に会った時から感じてたんだが...他人行儀に山下って呼ばれるのがな...。昔は下の名前で呼んでたろ?」
会った時から。
じゃあ、あの時に出た癖も、同じことを考えていたのだろうか。
「呼んでほしい?」
山下のほうへ体を少し寄せる。
「なんだよ、性格悪いぞ?」
「こういう性格になったのも、明のせいなんだけどな。」
さらっと名前を呼んでやると、山下の手が俺の顎を捉え、また唇を塞がれた。
「うん、どうせ苦いなら煙草よりコーヒーのほうがいいな。」
上唇を舐めるように舌でなぞる山下はなんだか色気を漂わせていて。
「今日は家帰るの?」
「帰りたくないと言ったら?」
首筋を食まれる。熱い舌で首筋を刺激され、甘ったるい声が漏れてしまう。
「今日帰らないなら、土日も帰れなくなるけど。」
暗に土日も一緒に居ようと回りくどい誘いをかける。
「それは困るな。でも、そうなってもいいぐらい、今は康介に触れたくて仕方が無い。」
耳元に熱っぽく囁かれ、耳裏を舐められた。
大人になって、俺は思ったことを素直にそのまま口にすることが出来なくなったのに。
山下は思ったことを素直に俺に伝えてくる。
変わった所も、変わらない所も、水のように俺に馴染んで心に染みていく。
決意をこめたような鋭い目で言われたあと、山下が唇に人差し指を付けた。
「何?」
「え...?」
「言いたいことあるなら言えば?考えるだけ考えてなんでもないとか言われたくはないよ。」
毒づくような言い方は、しばらく直りそうにない。もうずっとこうだったから。
「いや、康介に会った時から感じてたんだが...他人行儀に山下って呼ばれるのがな...。昔は下の名前で呼んでたろ?」
会った時から。
じゃあ、あの時に出た癖も、同じことを考えていたのだろうか。
「呼んでほしい?」
山下のほうへ体を少し寄せる。
「なんだよ、性格悪いぞ?」
「こういう性格になったのも、明のせいなんだけどな。」
さらっと名前を呼んでやると、山下の手が俺の顎を捉え、また唇を塞がれた。
「うん、どうせ苦いなら煙草よりコーヒーのほうがいいな。」
上唇を舐めるように舌でなぞる山下はなんだか色気を漂わせていて。
「今日は家帰るの?」
「帰りたくないと言ったら?」
首筋を食まれる。熱い舌で首筋を刺激され、甘ったるい声が漏れてしまう。
「今日帰らないなら、土日も帰れなくなるけど。」
暗に土日も一緒に居ようと回りくどい誘いをかける。
「それは困るな。でも、そうなってもいいぐらい、今は康介に触れたくて仕方が無い。」
耳元に熱っぽく囁かれ、耳裏を舐められた。
大人になって、俺は思ったことを素直にそのまま口にすることが出来なくなったのに。
山下は思ったことを素直に俺に伝えてくる。
変わった所も、変わらない所も、水のように俺に馴染んで心に染みていく。