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来世にて

第4章 前世 初恋

「帰蝶さまのお輿入れが正式に決まった。明日にでもお屋形さまからお話があろう。
わしは嫁入りの品々を探しに京へ起つことになった。美濃の姫に恥じぬような品を集めねばならん。暫く美濃を離れることになる。」

碁盤を見つめながら光秀が話しはじめた。

「さようにこざりますか。」

楓も顔をあげずに言葉を返す。

「お輿入れは帰蝶さまが14になる頃になろうぞ。」

楓の顔が少し曇ったのを光秀は見逃さなかった。

「ん‥なかなか。ほんに強うなられたな。」

光秀は次に指す石をもって考えるふりをする。ここか、といいながら石をおいた。

「あ、そこは‥。光秀殿は意地が悪うございますな。」

楓が悔しそうにキッと光秀を睨む。

「ならば、楓も容赦しませぬ。」

パチリと楓も石を指す。

「なるほど、面白き手」

二人はまた碁盤に意識を向ける。

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