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俺の幼馴染

第4章 液晶画面越しの関係

もうすぐHRが始まる。

俺はタオルで頭を拭きながら教室へ戻った。

「あ…薫、間に合ったんだ。」

教室に入って1番に目についたのが薫の姿。

独り言のように、ぽつんと呟いた。

薫は人気者だから、薫の席のまわりは人で賑わっていて輪に入りにくい。

実は、学校ではそこまで話したこともないのだ。

話し掛けたくても、雰囲気のせいで話し掛けられない。

今日は特に、寝癖の付いた薫がレアだということで盛り上がっている。

そんな中、俺は他の友達と過ごす。

寝癖の薫なんて、毎朝のように見ている。

そう珍しいものではない。

あの寝ぼけた顔も、みんなきっと見たこと無いんだろう。

美味しい手料理も、食べたこと無いんだろう。

本当は変態でドSなことも、知らないんだろう。

可愛い無邪気な照れ笑いも、見たこと無いんだろう。


薫が俺を抱き締めたことも、きっと知らないんだ。

そうして俺を抱き締めて、遅刻しそうになっただなんてみんなが知ったら、どんな顔をするだろう。


小さく芽生えた“嫉妬”という感情。

俺はその芽をそっと摘み取る。

例えそれが幼馴染への感情だとしても、その感情には蓋をしないといけない。

その芽が成長して花を咲かせた時に、悲しむことになるのは自分自身だから。

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