近くて甘い
第53章 Happy Birthday...
「忘れられない誕生日会になるといいですね…」
「え…え…」
まぶしい微笑み。
いつも完璧な彼は今日も調子を崩さない。
加奈子さんに神崎先生と要さんのことを聞いてから、初めて会った訳だけれど、どんな顔をすればいいのか分からない。
幸せになって欲しいという気持ちは誰よりも強い自信があるのに、それを声に出していう権利が私にはない。
要さんが不倫なんて…
どうしてですか?
なぜ?
要さん…
あなたは、今何を考えているの…?
そう言いたくても言えない立場に、私はただ声を詰まらせるばかりだった。
「隼人っー!誕生日おめでとう!」
「わ〜浩平だぁ〜!」
悶々とする中で、浩平くんと隼人の声が聞こえて、私は、気分を紛らわすかのようにそちらの方に目を向けた。
「もう9歳なんだってな?すげ〜じゃん!」
「本当本当っ!もうお兄さんだね!」
続いて現れた親友の梨子とその彼氏の亮くん。
隼人は三人の言葉に得意げな表情を見せて、微笑み。
幸せそうで良かった…
そう思うけれど、隣にいる要さんが気になって仕方がなかった。