近くて甘い
第53章 Happy Birthday...
コクリと、飲み物を飲む音が響いて、要の男らしい喉が揺れる。
知っている人物の中ではダントツに頭が切れて、
信頼出来て、
正直で、
誠実で…
非の打ち所がないという言葉のままのような男…。
なのに、どこか哀愁が帯びたその横顔に、小さく溜め息を洩らしながら、自身もグラスに口を付ける。
「関根…」
「なんでしょうか…」
どちらも互いの顔は見ない。
視線の先には、屈託なく笑う小学生たちと、真希の友だちたちがの和やかな様子がある。
「………ドジ女は、今夜実家に帰るらしいぞ」
「─────…」
軽く目を見開いた要は、再びグラスに口を付けると、カランと音を立てて溶ける氷のことを見つめた。
「………そうですか…」
再び二人の間に沈黙が流れる。
周りは騒がしいのにも関わらず、そのだけ時が止まったような、そんな空気が二人を包む。
「……いいのか…」
「っ……」
ハッとした要は、思わずグラスから目を離して光瑠のことを見つめた。
「お前は…それで…」
「………っ…」