近くて甘い
第53章 Happy Birthday...
ドクドクと要の血液がいつもよりも微かに強く波打つ。
いいのか…?
それは、どういう質問なのだろう…
─────さよなら
彼女とは別れの挨拶も済んでいるのに…
「……どういう意味ですか…」
「……」
「彼女は結婚するために退社して、
この地を去る…。
おめでたいですし、いいことに決まってるじゃないですら…」
にっこりと、笑みを向けられた光瑠は、要の心を読もうとジッと顔を見つめる。
「そうか…」
意味有り気にそれだけを呟いた光瑠は、ふと要から目を離すと再びグラスに口を付けていた。
それとほぼ同時に、部屋の電気がパチっと音を立てて急に消え出した。
慌てることなく二人は、辺りを見回すと、ケーキを持った真希と愛花が、Happy Birthdayの歌を歌いながら、部屋の中に入ってきた。