近くて甘い
第55章 淡い恋の終わり
それだけ返事をしただけでドアを開けようとしない要に、恵美は知り合いを気にしたように辺りを見回した。
「要くんっ…早く開けてくれる…?」
「本当に…
先生は強かですね…」
「え…?」
こちらを見てこなかった要がようやく自分の方を見てきたのを見て、恵美は、ハッと息を飲んだ。
昔…
彼が学生だった時の眼差しと、
変わらない真っすぐな眼差し…
何かを悟ったような恵美は、ドアから手を離して、後退する。
「終わり…なのね…」
「…………こんなのは間違っています…」
「────…」
「先生…
もう…
あの時とは違うんです…」
目にいっぱいの涙を溜めた恵美のことを、要は動揺することなく見つめていた。
あの時と同じように時は刻めない。
あの時とは立場も違う…
時は流れているのだ──