近くて甘い
第55章 淡い恋の終わり
「そう決めたから…
だから春人と一緒に歩いてるんじゃん…」
「………」
「そうでしょ…?
そんなことも分からないの?春人」
分かる…
まだ、お前が、あの男の事吹っ切れられてないのが…
「そう…だよな…」
真剣な表情から一転、微笑みを見せた春人に加奈子は安堵の表情を見せる。
この胸の痛みは何だろう…
これから幸せになるっていうのに、
これから大好きな実家に帰るっていうのに、
なんで…
─────どうでも良くなったんですよ…
「っ……早く行こっか」
加奈子自身も、自分の気持ちを誤摩化そうと必死に春人の手を引きながら、街を歩いていた。