近くて甘い
第55章 淡い恋の終わり
「小説に書いてあったとかじゃねぇの…?」
「ち、違うよっ…」
「へぇ…」
灯りで照らされている浩平の横顔を、愛花は顔を赤らめながら見つめる。
もどかしかった頃の思い出…
それが夜空に光りの玉のように漂っているように感じた。
「………自分がそうだったから…っ」
「え…?」
微かに聞こえた愛花の声に、浩平は耳をすます。
「ごめん、今なんて──」
「しばらくっ…浩平くんの事が好きって…気付けなかったから…っ」
「……───」
「だから…っ、本当はもっと前から浩平くんのこと好きだったんだと思うのっ…。
い、いや、思うっていうか…好きだったのっ…」
愛花の渾身の言葉にトクンと心臓が高鳴るのを感じた浩平は、瞬間的に愛花から手を離すと、そのまま両手で顔を覆って俯いた。
あぁああ…
今の不意打ちはちょっとっ…
「…浩平くん……?あの…」
さらに不安そうに見つめてくる愛花に、顔を真っ赤にした浩平は、そのまま愛花のことを抱き締めた。