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近くて甘い

第56章 片想いの終わり





───────私、副社長に片想いを続けます!




───────不倫なんかダメですっ…








加奈子の言葉が頭を駆ける。




「はぁっ…」




グッと拳を握った要は急いで戻ってきた係員の方を見て、再び真に迫った表情を見せた。





「忙しい中すまない…
それで、一体どこに行けば──」




「申し訳ありませんが、つい先ほど出航したみたいで…」




係員の言葉に、要は、ふっと肩の力が抜けたのが分かった。





「同じ行き先の便をお探しのようでしたらあちらでご案内しておりますので──」




だんだんと、係員の言葉が聞こえなくなって、口元だけを見つめていた。





ゆっくりと、顔を上げると、夜空に飛び立って行く飛行機が見えた。





遅かった───






「………ありがとう…」




力なくそういうと、要は、すぐ近くにあったイスに、脱力するようにして座り込んだ。




それと同時に




────────さよなら…



加奈子の最後の言葉が、追い打ちをかけるようにして要の頭の中でこだました。




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