近くて甘い
第56章 片想いの終わり
気付くのが遅かった…
思った以上の喪失感に、要は、両手で顔を覆った。
「ふっ…」
思わず洩れた乾いた笑い…
彼女を失っただけで、こんなにも動揺している自分がいる。
知らなかった──…
こんなにも、
彼女の存在が大きかったなんて…。
顔を上げた要は、ポケットから袋を取り出した。
形の崩れてしまったクッキー
それが今の状況の儚さを誇張させる。
彼女の気持ちに応えなかったのは自分だ──…
当たり前の展開。
それは、想われていることに甘んじて、彼女を傷付けた天罰──
「はぁ…」
また失った…。
真希が光瑠を選んだ時とは、また違った胸の痛み。
乗り越えられるのだろうか…
こんなにも…
胸が痛いのに──…
「───何してんだよ…」
………?
突然の背後から呼びかけに、要は、いぶかしげな表情をしながら振り返った。
そして、そこに立つ見覚えのある青年の姿に
思わず大きく目を見開いて
イスから立ち上がっていた──…