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近くて甘い

第56章 片想いの終わり

もう一生結婚出来ないんだろう。



そんな気がして、加奈子は、夜空を見上げた。



雲がかかっていて、星は見えない。



仕事もやめてしまったから、また就活をしなくてはならないし、アパートもまた契約しなさなくてはならない。



先が見えない。



それも…



手の届かない王子に恋してしまったがために…





「はぁっ…」





疲れが、どっと溜まったのを感じた。




これからずっと、こうなんだろうか…



ずっと、要副社長の事を想ったまま、幸せになれないんだろうか…。





「お先…まっくら…」




ぽつりと呟いたら余計に虚しくなった。



後少しでもう自分のうちにつく。




契約が切れる一週間前に出て良かった…。





「でも布団も何もないや…」




何も…




何もない…






どこか別の場所に行って、再スタートしようかな…




もう要副社長に会わなそうな場所で…





「っ……うっ…」





ちょうど、鍵穴に鍵を差したら、ボロボロと涙が出てきて、そのままビニール袋を地面に落としてしまった。




カンの大きな音が響く──…



それでも、そんなことを気にする余裕もなく、加奈子は、片手で顔を覆って子どものように声を上げて泣いた。




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