近くて甘い
第56章 片想いの終わり
ようやく会えた…
遠くへ飛び立ってしまったと思っていた彼女が、今自分の目の前にいることに、要はホッと胸をなで下ろしていた。
「なんでっ…なんでここにっ…」
「君に…
どうしても伝えたいことがあって…。
空港まで行ったんだけど、出航したあとだったから、本当に焦ったよ…」
要の言葉に、加奈子はパニックを起こしていた。
空港まで行ったっ…?
どうしてっ…
なんで要副社長がそんなことをっ…
「田部さん……」
じりじりと、要は真剣な顔をして加奈子に近付いていった。
あぁ…──
本当に…
本当に要副社長だっ…
その瞳に、吸い込まれそうになった加奈子は、突然要と恵美が二人で楽しそうにしていた日の事を思い出して、ハッとした。
このままじゃっ…
このままじゃいけないっ…
「やめてくださいっ…」
「────…」
突然加奈子に拒絶されるように胸を押されて、要は、そのまま動きを止めた。