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近くて甘い

第56章 片想いの終わり

いつも見ていた要の優しい表情に、加奈子は瞳を揺らす。




「君を失って分かったよ…



僕には



君が必要だ…」







今、一体何が起こっているんだろう…っ



だってだってだってだって




「かっ、かにゃめふくしゃちょはっ……お付き合いしてる人がっ…」





間抜けに噛んだ加奈子に要は、ふふっと笑って頬に触れた。






「別れたよ…。本当に大事な人に気付いたから…」




わっ、別れたって…っ




パニックが未だに収まらない加奈子は、あ、あ、あ、と無意味な言葉を連発していた。





「田部さん…」




力強く大きな身体で抱きすくめられて、加奈子は、今度は放心状態になる。





「僕の傍にいてくれないかな…」





「っ………はっ、はっ…え?なっ、えっ…!?」


「それとも…もう本当にやめてしまう…?」




少し切なげに光った要の瞳に加奈子の驚いた表情がうつる。




「………頼むよ…。


君が傍にいると、自然と笑顔になって…

とても幸せなんだ……」




夢じゃないよねっ…





はらりと流れた涙は、さきほどの涙とは違った。



そして、力一杯首を縦に振って返事をする──…



加奈子の返事を聞いて、要もまた胸が一杯になっていた。



やっと…



やっと訪れた幸せ…




そして、目の前でまだ状況が飲み込めていない加奈子が、愛しく見えて仕方が無い…



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