近くて甘い
第58章 社長夫人のお受験
少し癖のかかった綺麗な茶色い髪の毛が私の額をくすぐった。
相変わらず、綺麗な顔…
「顔色が良くないな…」
ぼんやりと光瑠さんに見とれていると、光瑠さんは静かにそういって、近くにいたメイドさんにユキちゃんを手渡した。
「多分隼人の風邪が…」
「無理をして遅くまで勉強をしているからだ…」
そう静かに光瑠さんは言うと、私のことをまるで子どものように抱えて、軽々と私のことを持ち上げてしまった。
「きゃっ…」
とっ、突然すぎっ…
「風邪を引いた隼人に寝ろと口うるさく言っていたのはどこのどいつだ…」
「それはっ…」
「いいから早く休め…。いつまでそんな青白い顔をしているつもりだ」
……なんか、心配してくれてるのは分かっているけど、言い方が…
「少し身体が怠いだけで熱は…」
ベッドに降ろされると、光瑠さんは私の言葉を聞かずに、私に布団をかけて、また至近距離で私のことを見つめた。
「……ごたごたとうるさいな、これだからガキは嫌いだ」
「がっ、ガキって…っ」
私がガキだったら、あなたはどうなる訳!? 心の中で思った言葉を懸命に飲み込んだ。