近くて甘い
第58章 社長夫人のお受験
「大事な試験が控えているんだろう…?」
「…………」
「この俺が教えてやったのに、体調不良で受けれないなんて事になったらお前はどう責任を取るつもりだ!」
……本当、要さんと言っている内容は変わらないはずなのに、言い方に問題ありというかなんというか…。
「……分かってます…休みますから、そんなに大声出さないで下さい…」
ギュッと光瑠さんの服の裾を掴んだら、光瑠さんは、はぁっと深い溜め息をついて私の頰に触れた。
「言っとくが、俺からすれば、試験が受けれなくなって、進学がなくなった方が好都合なんだからな…」
「っ……」
「それでも、頑張ってきたお前を見ているから、だから、こうして無理矢理抱く事もせず、休めと言っているんだ…」
「っ…そんなことさらっと言わないでくださいっ…」
顔が紅くなるのを感じながらそういうと、光瑠さんは、私のことを見つめながら、ゆっくりと唇を近付けた。
不器用な愛が心地よくて、だんだんとまぶたが重くなって行く。
名残惜しく唇が離れると、私は、少しだけ潤んだ目で光瑠さんのことを見つめた。
「………キスなんかしたら…風邪がうつっちゃいます…」
照れ隠しでそういったのに、光瑠さんはそれを見透かしたようにフッと笑って再び私に口づけた。
「………俺にうつしてお前が治るなら、いくらでもうつせ…」
「っ……」
「それくらい俺がお前の事を愛してるのは、お前も分かってるだろう……」
トクンと心臓が鳴って、恥ずかしさから、私は目を瞑った。
ちゃんと体調治さなきゃ…
そんなことを思いながら、私は幸せな気分で眠りに落ちた。