近くて甘い
第59章 運命の悪戯
「到着しました」
「っ…社長っ…」
運転手の言葉を聞いてすぐに飛び出した光瑠の後を、要と酒田が追う。
「真希はっ…」
勢い良くナースステーションに声を掛けた光瑠を、要が制止した。
「すまない…っ。藤木真希という高校生が運ばれてきたと思うのだが部屋を教えてもらっていいか?」
焦った中でも冷静さを見せる要に、光瑠は頭を振る。
まだ容態は分からない…っ。
だがいくら落ち着けと身体に言い聞かせても、身体の震えが止まらない。
「……あ、えっとっ…」
「早くっ…早く教えろっ!」
あまりの勢いに看護師がたじろいでいるのを、光瑠は余裕なく叫ぶ。
身体を震わせた看護師は、はいっ!と怯えたように返事をした。
「藤木真希さん…藤木真希さんは…このフロアの奥の115のお部屋です」
「ありがとうっ…」
すぐに看護師の指差した方向に、光瑠は走って行く。