近くて甘い
第60章 卒業と、それから…
あまり見ない光瑠の頭を下げている姿に要は目を見開いていた。
やはり、色々なことを考慮して、社長の弱点は真希さん…ということか。
「ふっ…」
少々緊迫した中で、真希の父は堪えきれないと言った風に笑う。
は…?ど、どういうことだ…?
困惑する光瑠を見て、父は笑いで出た涙を拭った。
「……冗談だよ…」
「…………」
「……残念なんて、思ってないよ…そりゃあ妊娠にびっくりしたのは事実だけどね」
「………は、ぁ…」
騙された感覚に、光瑠は少しムッとしながらも肩の力を弛める。
「……………光瑠くんには感謝してるよ…。
休日、たまに遊びに来る真希と隼人はいつも君の話をしてくれてね。その笑顔を見て『あぁ、本当に幸せそうだ…』って、毎回思っていたんだ」
「ありがとうございます…」
「いやいや、お礼を言うのは僕の方だから…」
その笑顔をみて、光瑠は真希となんてよく似た笑い方をするのだろう…と思った。