近くて甘い
第60章 卒業と、それから…
そして式が終わろうとする中、光瑠はソワソワとしながら、真希の父に声をかけるタイミングを見計らう。
「分かってるよ、光瑠くん…」
「………え?」
「ちゃんともってきているから…」
そう言って真希の父は大きな封筒を光瑠に渡した。
「………記入漏れはないと思うよ」
「──────…」
「…よろしくな……」
複雑な顔をして笑った父に、光瑠は力強く頷いていて立ち上がった。
真希の方を見つめる光瑠が足を進めるのを見て、要がふふっと笑う。
「僕らの本番はここからですね…」
「本当に複雑だよ…」
弱気な発言をする真希の父の肩を要は優しく触れた。
「………要くんにも本当に感謝してるよ」
「感謝するのはまだ早いです、そろそろ僕らは行きましょう」
ニッコリと微笑んだ要に真希の父も返事をするように緩く微笑んだ。