近くて甘い
第61章 近くて甘い
予想外の望の返事に、私はソファーに座りながら顔をしかめた。
いつもなら、怒って突っぱねるのに、おかしい…
「ねぇっ…お父さんっ…!」
「おっ…、ど、どうした…」
そしてさらに光瑠さんに抱き着いた望に、私は大きく目を見開く。
おかしい…
絶対なんかある…。
そんなことに気付かない光瑠さんは、かわいい娘に、久々に抱き着かれて、それはそれはだらしない顔を披露していた。
「あのね…?」
「あぁ…」
少し身体を離して光瑠さんのことを見つめる望。
私はそんな二人を見ながら、ゆっくりと大きなお腹を抱えてソファーから立ち上がった。
「私、トランペット欲しいの!」
「トランペット??」
やっぱり…っ。
「望っ!あなたこの前もそうやってお父さんに物をねだって買ってもらっていたでしょ…!」
私が、怒ると、ムッとして望は唇を尖らせた。
「お願い…いいでしょ…?」
「……んん…」
望の言葉に言葉を詰まらせる光瑠さんに私は溜め息をついた。
素直でいい子だし、心優しく育っているとは思うけど、本当に望はわがままだ。
全く…
誰に似たんだか…。