近くて甘い
第19章 休暇は甘く…
「星…」
星…??
「星…光瑠さんと見たいです…」
手を握ってきた真希に光瑠は強く握り返した。
「分かった…」
「やった…」
「ただ、これを羽織れ」
差し出したブランケットを頭から被せて光瑠はまるで赤ん坊を抱えるように真希をかかえた。
「きゃっ…」
びっくりした真希が反動で光瑠の首に腕を通す。
やけに楽しそうな光瑠の表情をみながら、真希も笑っていた。
腕に真希を座らせるように軽々と抱えながら、光瑠は外に出た。
「寒くないか…」
「大丈夫です!」
ブランケットの上から真希の腕を摩る。
何か温かい飲み物を作らせれば良かった…
そんなことを思いながら、光瑠は顔を上げた。
「あれ…見えない…」
同じように顔を上げた真希が残念そうに呟く。
曇ったか…
まぁ、仕方が無い…
ゆっくりと顔を下げていった光瑠は、暗闇で微かに見える真希の姿をじっと見つめた。
「うーーん…根気よく見てたら、見えますかね?」
光瑠の視線に気付かない真希は空を見上げながら、あどけなくそんなことを言った。
冷たいはずの風が何故かその時だけ暖かく感じた──
真希の横顔を見ながら、溢れる幸せに胸がいっぱいになる。
「綺麗だ…」
えっ?と声を上げた真希は、空を隈なく見つめる。
「どこですかっ!? 全然見えないですけどっ…」
ふっと笑った光瑠は、再び真希を見つめた。
「お前には見えない…」
「なっ…どういう意味ですかっそれっ!」
不服そうな顔をしながら、真希が顔を下ろして光瑠を見た。
「俺にしか見えない星がある…」
「………?」
「そういうことだ…」
甘く言葉を吐きながら、光瑠は真希の顔を引きつけて、優しく唇を塞いだ。
静かな口付け…
そっと唇を離した光瑠は、耳元に唇を滑らせて、愛しげにまたキスを落とした。