近くて甘い
第20章 万能の王子
これから、まだ他の仕事だってしなきゃいけないのにっ…
投げ出したくなるような書類の海の中で小さな白い手が目に入って、加奈子は顔を上げた。
「大丈夫ですか…?」
鈴のなるような優しい声…
黒く長い髪がツヤツヤと光る。
制服を着ているがかなり落ち着いた雰囲気を漂わせている彼女を見つめながら、加奈子は固まってしまった。
「これ、拾うの手伝いますね?」
にこりと微笑まれて、トクンと胸が鳴った。
決して同性愛者ではないが、彼女の纏うその朗らかさに、トキメキに似た感情が加奈子の中で生まれていた。
「あああああああのっ………」
動転しすぎて言葉うまく出ない。
いつもの癖に苦戦していると、上からハハハと知っている笑い声が聞こえてきて、加奈子はまた再び固まった。
まさか───
しゃがんだ彼は、書類を拾って加奈子に笑いかけた。
「お久しぶり…田部さん。
相変わらずだね」
「副社長様っ!!!!」
目に涙が浮かびそうなほど喜ぶ加奈子の隣で、真希が、ハッと息を飲んでいた。
以前、要が助けたという“田部”という名字を思い出したからだ。
「あなたが…田部さん…」
「あっ…えっとっ…はいっ…!田部かなごんです!」
あっ…またっ…
「かなごん…?」
「いっ、いやっ…!確かに小学校の時大嫌いな男の子は私のことをカナゴンって呼んで来たけれど、本当の私の名前は加奈子!加奈子です!!!!」
投げ出したくなるような書類の海の中で小さな白い手が目に入って、加奈子は顔を上げた。
「大丈夫ですか…?」
鈴のなるような優しい声…
黒く長い髪がツヤツヤと光る。
制服を着ているがかなり落ち着いた雰囲気を漂わせている彼女を見つめながら、加奈子は固まってしまった。
「これ、拾うの手伝いますね?」
にこりと微笑まれて、トクンと胸が鳴った。
決して同性愛者ではないが、彼女の纏うその朗らかさに、トキメキに似た感情が加奈子の中で生まれていた。
「あああああああのっ………」
動転しすぎて言葉うまく出ない。
いつもの癖に苦戦していると、上からハハハと知っている笑い声が聞こえてきて、加奈子はまた再び固まった。
まさか───
しゃがんだ彼は、書類を拾って加奈子に笑いかけた。
「お久しぶり…田部さん。
相変わらずだね」
「副社長様っ!!!!」
目に涙が浮かびそうなほど喜ぶ加奈子の隣で、真希が、ハッと息を飲んでいた。
以前、要が助けたという“田部”という名字を思い出したからだ。
「あなたが…田部さん…」
「あっ…えっとっ…はいっ…!田部かなごんです!」
あっ…またっ…
「かなごん…?」
「いっ、いやっ…!確かに小学校の時大嫌いな男の子は私のことをカナゴンって呼んで来たけれど、本当の私の名前は加奈子!加奈子です!!!!」