テキストサイズ

近くて甘い

第27章 キスの責任

“パリ”


その場所に光瑠が異常に反応する訳は、前回のパリ出張が関係している。


真希の母が亡くなって翌日、仕事で1週間パリへ酒田と経った光瑠…。


真希のことを心配しながら眠れない日々を過ごし、飛行機まで速めて帰った光瑠の目に飛び込んだものは、


要と真希が唇を重ねている場面だった──…



辛い思い出なのは、酒田もよく分かっていた。


でも、結局、社長と真希さんが一緒になったのだからいいじゃないか…




そう思うのだが、光瑠はそうは思わないらしい。



「どうしても、社長にお会いしたいと…そうおっしゃっていまして…」


「………」




黙り込む光瑠に困り果てる酒田。




「社長っ…あのプロジェクトを成功させるには、どうしても直々にあのデザイナーと──」


「あぁったく!うるさい奴だな…っ」


「すみませんっ…でもっ…」



社長として、
こんなことで返事を渋ってはいけないことくらい、光瑠も分かっていた。


これはビジネス…
子どもではないのだのだから…



「分かった…」



ようやく返事をした光瑠に酒田は思わずガッツポーズをしていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ