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近くて甘い

第27章 キスの責任

至って変わらない様子の要を探るようにして眺める。



「じゃあ僕は失礼しますっ!」


「なっ!おいっ!逃げるなっ!」



今がチャンスとばかりに走り去って行った酒田は、ニコリと笑って、慌てて扉を閉めた。



「ったく…逃げ足の早い奴だっ…」



要が差し出した書類を眺めた光瑠は脇に置いてあるペンを掴んだ。




「どうかしたんですか?」


「……ん…」



しばらく、真剣に書類を読んだ光瑠は、サインをすると、要にそれを差し出して、溜め息をついた。



「来週から、2週間、パリに行く事になった…」



「え?2週間もですか…?」



「ああ…」



腰を下ろした要は、驚いたように目を見開いて、腕を組んだ。




「それは結構大掛かりですね…」


「……そう…だな…」



何故か気まずい沈黙に感じた光瑠は、頭を掻いて、コーヒーカップのふちをなぞった。



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