近くて甘い
第29章 Little sisters!
「世の中にはもっといい男がいるぞ」
「「いないっ!」」
「ふっ…それは光栄だけど」
優しく笑う要に沙紀と沙羅は目をキラキラさせていた。
昔から、年の離れた兄である要は、二人の憧れだ。
何でも出来てかっこいい、理想の兄───
「要が兄さんのせいで、他の男が全部ダメダメに見えるんだもん…」
後ろから周り込んで、沙羅が拗ねたように言った。
慕ってくれる妹はとてもかわいいが…
少々世話が焼けすぎるな…
「完璧な兄を持つと、理想が高くなっちゃうんだよね…」
沙紀が、長い髪を靡かせながら、溜め息まじりにそう言った。
完璧…
「別に俺は完璧なんかじゃない…」
「完璧だよっ!優しいし!」
「頭いいし!」
「「超かっこいいし!」」
打ち合わせでもしたのかと思うくらい息ぴったりな妹たちを見ながら、要はソファーに座り込んだ。
「褒めたって片付けは免除しないぞ」
ムーっと顔を見合わせた沙紀と沙羅。
要は、口元の傷に触れながら、光瑠に言った言葉を思い出していた。