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近くて甘い

第29章 Little sisters!

「要…何かあったの…?」



「いや…別に…」



隣に座ってきた沙紀が、心配するように見つめた。


真希よりも年が一つ上のはずなのに、まだ幼い彼女は純粋な瞳を要に向ける。




「ねぇ…何があったの?私たち、色々びっくりしてるんだよ?」


「……」



沙羅も沙紀と同じように、脇に座って要を見つめた。




「私たちがアメリカにいる間に事故に合って目が見えなくなって…。

でも見えるようになって…家を出るって…


もぉっ、訳わかんない!」


「お母さんもお父さんもすごく心配してたよ…」




妹たちの言葉を聞きながら、要はソファーから立ち上がって、ベランダの方へ行った。




二人のいう通り、ずっと実家に住んでいた要は、この春一人暮らしをはじめた。



初めて、使用人もいないその質素な部屋で、掃除から料理までこなして暮らしている。




「自立したかったんだよ。
あの家は居心地はいいけど…いや、居心地が良すぎるからな」




有川家ほどの資産家ではないにしても、関根家も立派な家柄。



使用人も運転手もいるその恵まれた空間から、出ようと思ったのは、一人前の男になりたいと、目が見えるようになってから強く思ったからだ。




「……大切な人が…いるの?」



「…」



「お母さんが、要が一人暮らしをあんなにしたがったのは、もうすぐ結婚するつもりだからだって、騒いでたよ」



「なんだそれは…」



眉をしかめた要は、フッと笑った。




「違うの?」




沙紀の肩から、サラリと髪が落ちる。


彼女と同じ、

黒くて、長い髪…






「違わないけど、違うな」


「なにそれっ!どういう意味!?」



ソファーの背もたれに寄りかかった要に沙羅は顔を近付けて迫った。



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