近くて甘い
第31章 if...
「っ……要さんっ…」
助けを求めるように、真希は、要を見上げた。
「……大丈夫だ…君を売ったりなんかしないよ…」
「お願いっ…私は要さんの傍にいたいんですっ…」
「大丈夫だってば…」
そんな二人の様子を見ながら、光瑠はワナワナと震えていた。
愛し合う人たちの姿が光瑠には辛い。
未来を感じさせる二人の前では、自分の孤独がいつも以上に浮き彫りになる。
何故、自分だけが一人でいるのかが分からない。
必要以上の愛を望んでいる訳ではないのに、何故か、ずっと満たされない。
愛人とともにこの世を去った母。
その事実に耐えられず、息子を置いて、いとも簡単に自ら命を断った父。
無償の愛を捧げてくれるはずの両親から、死という最悪の形で裏切られ、壊れた自分…
金や地位や名声…
持っていても、心は何も満たされない。
唯一支えてくれた悠月は、
“光瑠”自身を見て、そして愛してくれた。
なのに、
そのやっと掴んだ幸せさえも
また死という形で
儚く散って行った…