近くて甘い
第31章 if...
「社長も…冗談はもうやめてください…そんな人を買うだなんて──」
「いくらでも出すと言っているだろうがっ…何千万でも何億でもいいっ…」
顕著になる光瑠の歪み。
要ははっきりとそれを感じ、ショックを受けていた。
共に働いてからまだ2年ばかりだが、光瑠のもっている力に要は強く惹かれた…
一生一緒に仕事がしたい
そう思ってずっと働いてきていたが…
「申し訳ないですが、僕は彼女を売る気はありません」
「何故だっ…その小娘一人を俺に渡すだけでお前は大金が手に入るんだぞっ!」
「僕は彼女を愛しています…」
「っ……」
「理由はそれだけです」
言葉を返せなくなった光瑠は、直接的な要の言葉にほのかに顔を染める真希の事を見た。
“愛していれるから手放したくない”
それは俺も一緒だった…