近くて甘い
第32章 クッキーの教え
どんな世界でも、何かが欠けている…
目が見えるようになった時、とても幸せな気持ちだったが、もしも真希とうまくいっていたら、目の手術は間違いなくしなかったに違いない。
そしたら、一生見えないままだった…
「………それが、代わりか…」
真希と結ばれなかった代わりに手に入ったものは、思っていたよりも多い…。
皮肉だ…
「はぁっ…副社長っ…」
突然の声に、要は現実に引き戻された。
俯いていた顔を上げると、髪がボサボサのままの加奈子が、紅い顔をして立っていた。
「田部さん…」
「これっ…今日のクッキーです!」