近くて甘い
第32章 クッキーの教え
「いつもありがとう…」
無理に笑った要は、加奈子が差し出すクッキーを受け取った。
「……中々いい髪型だね」
からかわれた加奈子は、ハッとしてそのボサボサの髪の毛を整え始めた。
「すみませんっ…寝坊しちゃって…っ」
「そうなんだ…」
愉快な様子の加奈子を見て、要は微笑んだあと、またクッキーの袋が温かいことに気付いて、目を見開いた。
「今日は、アールグレイのクッキーです!」
ニッコリと微笑んだ加奈子は、少し間を開けて、要の隣に座った。
「私、個人的には一番このアールグレイのクッキーが一番好きなんですっ!」
「田部さん…」
「あっ…でも、それはあくまで私の話ですからっ…いつも言っているようにもしお口に合わないようでしたら、捨てていただいて構いません!」
「………田部さん?」
「本当にっ…あのっ…傷付いたりしないので、気にせず大胆にゴミ箱に───」
「田部さんっっ!!!!」
あまりにずっと話しているので、要がついにしびれを切らせて叫ぶと、加奈子はビックリしながら、ベンチから立ち上がった。