近くて甘い
第33章 想いの暴走
ゆっくりと、光瑠は歩みを進めた。
身体が勝手に行き先を決めて、漂う。
しばらくして辿り着いた部屋の扉の前で、光瑠はただただ立ち尽くしていた。
ドアノブに手を乗せる。
あとは、ノブを下げて重くはないその扉を推すだけ───…
なのに、それだけが今の光瑠には簡単には出来ない。
この一つの扉が、とてつもなく大きなものに思えて仕方が無い…
「っ……」
もう何日間、触れていないのだろう…
もう何日間、話していないのだろう…
もう何日間、その姿を見る事すらしてないだろう…
堪えきれずに、
光瑠はついに、その扉をゆっくりと開けた。