近くて甘い
第33章 想いの暴走
纏っているものは、何もなかった。
唇や首筋や胸が、乱暴にされたからか、ヒリヒリしている。
「…………俺ではダメかっ…」
私から手を離した光瑠さんは、俯きながら、小さな声で呟いた。
違うっ…
そうじゃない…
でも、涙で言葉を発することも出来ないし、まだ冷めぬ恐怖のせいで、それを光瑠さんにそうではないと伝えることはまだ無理だった。
「どうすればいいっ…」
光瑠さんは両手で頭を抱えて、髪をぎゅっと握った。
乗り越えたはずだったのに、まだ拭えぬこの不安…
ぱらぱらと流れる涙のせいで、光瑠さんの顔もよく見えない。