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近くて甘い

第34章 企てとすれ違い

思ってもみなかった言葉に、私は目を見開いた。





「何度も、“もしもこうだったら”と考えました…

それでも、今は今でしかない。

何も変わる事はない…。

欠けたものばかり追い掛けていて、得たものを無視していました…」




「要さん……」



「僕はこの会社が好きです。

周りの風景を見る事が出来るもの、本当に幸せなことだと思います…」




視線を落とした要さんは、私の手を躊躇いがちに近付けてギュッと強く握った。





「っ……」



大きな手…
だけれども、
光瑠さんとは違う温度…




「真希さんっ…」




少し苦しそうに私を呼んだ要さんは、微かに震えたあと、顔を上げて私のことを見つめた。



黒髪から覗く澄んだ瞳。


出会ったときから、


彼はその瞳に私の姿を映している。






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